エネルギーも運動量のことも理解しているようで理解していない(2012年、日本)
- 運動量の再定義
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- 運動量とは破壊力あるいは貫通力
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- 前のめり転がりの全運動量の変化
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- パットした瞬間の全運動量
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- ωfのときの全運動量
転がりとは何かを解く鍵
そして、「運動量」の再定義
運動量(Momentum)の定義、角運動量(Angular Momentum)の定義
というのは単独では説明されている。
一般論としては、すべて理解されていると思っている。
ところが、不思議なことに、
・転がりの運動量と角運動量の関係を論じた文献を見たことがない。
・運動量とエネルギーの関係もまた納得のいく説明を聞いたことがない。
・運動量とは勢いのようなものと言われる一方で、角運動量は回転の勢いと言う人もいれば違うと言う人もいて、意外にはっきりしない。
運動量と角運動量、
運動エネルギーと回転エネルギー
というように最初から分解して考えるのが科学的と考えられている。
しかし、実は、そのことが、
転がりの理解を妨げ、誤った考え方に陥っていた本当の理由です。
特に、パットしてから真の転がりになるまでの間の運動、つまり、
「前のめり転がり」はエネルギー変換と運動量の変換が複雑に絡み合っているため、この理解が不可欠です。
正しい理解に導く鍵は、全運動エネルギー、全運動量です。
ここでは、それらの関係を論理的に明らかにする。
転がりと言う具体的で現実的な現象で考えることで、
- 角運動量とは本当は何か、
- 運動量が実はそう言うことだったのか、
- 転がりとは何か、
ということを初めて理解することができる。
そして、ついに、「運動量」という基本的な物理量が再定義される歴史的な日を迎えた。
転がりの全運動エネルギー
参考文献[21]で引用していた参考文献[23]に興味深い記述があり、一言でまとめると、
- 「接地点回りの回転が真の転がりの根本的な原理である。」
具体的に言えば、
「真の転がりのとき、接地点回りの回転エネルギー、つまり、全運動エネルギーは、すなわち、中心回りの回転エネルギーと並進の運動エネルギーの和と等価である。」
\[ {\Large \fbox{ $ \displaystyle{ \begin{align} 真の転がりも&接地点回りの回転なので、全運動エネルギーKは、\\ K=& \frac{1}{2}I_{p}\omega^{2}\\ =& \frac{1}{2}(I_{c}+mr^{2})\omega^{2}\\ =& \frac{1}{2}I_{c}\omega^{2}+\frac{1}{2}mV^{2}\\ つまり、&接地点回りの回転は、中心回りの回転と直進運動の和と等価。\\ I_{p}=&I_{c}+mr^{2}=\frac{7}{5}mr^{2}:接地点回りの慣性モーメント(平行軸線定理による)\\ V:&並進速度\\ \omega=&\frac{V}{r}:角速度\\ r=& 0.02135[m]:ゴルフボールの半径\\ \end{align} } $ } } \]
従来の発想は、回転エネルギーと並進の運動エネルギーの合計したものが、転がりの全エネルギーであるというものだった。あるいは、直進距離と回転距離が一致する状態と言う考え方です。
回転運動と並進運動という別々のものが合わさったものが転がり、というとらえ方をしていた。
でも、考え方は本当は逆なのです。
接地点回りの慣性モーメントIpを中心回りの慣性モーメントIcとm・r2に分離して変形する(いわゆる平行軸線定理)という発想は、そう言われてみると、なるほどと気づかされた。
こういう書き方をした文献は他に見たことがないが、
論理的・科学的であり、納得できる。
この変形から改めてはっきりしたことは(斜面での回転モーメントで証明したように)、接地点回りの角速度ωと中心回りの角速度ωが等価であることです。
転がりの全運動量 、「運動量の再定義」(2012年、日本)(世界初!!)
「全運動エネルギーの式」と同じ発想で、
運動量も考え直してみると、
- 「真の転がりのとき、接地点回りの角運動量、つまり、全運動量は、すなわち、中心回りの角運動量とm・rVの和と等価である。」
中心回りの角運動量Icωが分離されるのはもっともだ。
ところが、(並進の)運動量がmVだと思い込んでいたが、
実は、運動量とは半径rをかけた量、<span style="color:red; font-size:12pt">m・rV</span>である。
<span style="color:red; font-size:12pt">運動量の再定義</span>です。
\[ {\Large \fbox{ $ \displaystyle{ \begin{align} 真の転がりは&接地点回りの回転なので、全運動量PLは、\\ PL=& I_{p}\omega\\ =& (I_{c}+mr^{2})\omega\\ =& I_{c}\omega+\color{red}{m\cdot rV}\\ つまり、&運動量はmVではなく、半径rを掛けたもの。\\ I_{p}=&I_{c}+mr^{2}=\frac{7}{5}mr^{2}:接地点回りの慣性モーメント(平行軸線定理による)\\ I_{c}=&\frac{2}{5}mr^{2}:中心回りの慣性モーメント\\ V:&並進速度\\ \omega=&\frac{V}{r}:角速度\\ r=& 0.02135[m]:ゴルフボールの半径\\ \end{align} } $ } } \]
当然の疑問
この全運動量の変形だけを見ると、今までの常識から判断して、
運動量がm・rVのはずがない、だから、
このm・rVと言う部分はなにか別の意味があるのか、あるいは、
この変形自体が無意味だと、結論づけてしまう人がほとんどでしょう。
私自身、初めてこの変形をしてみた時に、そう思ったものです。
正しいと考えてみることで新たな道が拓ける
ところが、全運動エネルギーの変形は正しい。
だとすると、全運動量の変形もまた正しいはず。
そう考えるのが理にかなっている。
逆に、全運動量の変形だけができない、
という特殊性があると考えるほうが不自然です。
この変形が間違っているということを今まで誰も証明していない。
そもそも、この変形を書いた文献は存在しない。
参考文献[23]でさえ全く言及していないのが、実に奇妙です。
おそらく、この変形を試みたことがある人は数多くいたと思う。
でも、m・rVと言う部分を見て、説明がつかないので、放棄してしまったのでしょう。
もしそんなことを公言したら、
批判好きの格好の餌食になるか、
職を失ってしまうという心配もあったからでしょう。
そして、運動量は直接測れるようなものではないし、
運動量とは何か、角運動量とは何を意味するのかということすら
完全に理解していなかったからです。
この変形が間違っていることを証明するのではなく、
正しいと仮定したら、それは何を意味するのか、
それを考えてみることが近道です。
そうすれば、今まで運動量をmVと考えていたことが間違いで、
m・rVの方が正しいことが理解できる。