平行軸線定理は密度が一様でなくても成り立つ

Parallel Axis Theorem
is valid in case of
Ununiform Mass Distribution

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「平行軸線定理」は理解しているようで理解していない



Real Science of Golf





2012.10.09

平行軸線定理(平行軸の定理)は、
剛体の密度が一様であるときだけ成り立つと勘違いしている人が多いが、
実は、密度が一様でなくても成り立つ
 
mD2何を意味するのかさえ完全には理解されていなかった
平行軸線定理の最大の役割を考えれば、自ずと、真の姿が分かる。
 
 

Real Science of Golf

2012.11.03〜09

平行軸線定理の数学的な求め方(従来)





平行軸線定理は、以下のように求められると説明されている。


ところが、力学の本では、剛体の密度が一様であるのかないのか、明確に書かれたものを見たことがない。前提がはっきりしない。論理的な学問であるはずの物理学で、このような曖昧な説明がされているのは実に不思議です。


分かり切っているので、あえて書かないのだろうか?
でも、そうだとしても、前提をはっきりと書くべきでしょう。


\[ {\Large \fbox{ $ \displaystyle{ \begin{align} 平行軸線定理&の数学的な求め方(従来)\\ I_z=&\int\limits_{}^{}{\left({x^{2}+y^{2}}\right)}{\rm d}m\\ =&\int\limits_{}^{}\left[{{\left({\color{red}{x_c}+x_m}\right)^{2}+\left({\color{red}{y_c}+y_m}\right)^{2}}}\right]{\rm d}m\\ =&\color{red}{\int\limits_{}^{}\left[{x_c^{2}+y_c^{2}}\right]{\rm d}m}+\int\limits_{}^{}\left[{x_m^{2}+y_m^{2}}\right]{\rm d}m+2x_c\int\limits_{}^{}{x_m}{\rm d}m+2y_c\int\limits_{}^{}{y_m}{\rm d}m\\ =&\color{red}{\int\limits_{}^{}\left[{x_c^{2}+y_c^{2}}\right]{\rm d}m}+\int\limits_{}^{}\left[{x_m^{2}+y_m^{2}}\right]{\rm d}m\\ =&\color{red}{mD^{2}}+I_c\\ このように&求められるが、\color{blue}{mD^{2}が物理学的にどんな意味}\color{blue}{があるのかが全く理解できない}。\\ I_z:&回転中心(原点)の回りの慣性モーメント\\ I_c:&質量中心回りの慣性モーメント\\ (x,y)=&(x_c+x_m,y_c+y_m):回転中心を原点とする座標\\ \sqrt[]{x^{2}+y^{2}}=&回転中心(原点)からの距離\\ x_c,y_c:&質量中心の座標(上記の式の中では定数)\\ x_m,y_m:&質量中心から見た質点の相対座標\\ D=&\sqrt[]{x_c^{2}+y_c^{2}}:回転中心(原点)から質量中心までの距離\\ dm:&質点の質量\\ \int\limits_{}^{}{x_m}{\rm d}m=&\int\limits_{}^{}{y_m}{\rm d}m=0\\ \end{align} } $ } } \]

最初の式を見ると、回転中心からの距離の二乗にその地点の微小質量を掛けているので、密度が一様であることを前提としていると考えるのが普通です。


任意の位置の微小質量が距離の関数であれば(つまり一様ではない)、この式が成り立つのだろうか? 一様でなくても、それぞれの地点での値を加算して行くだけなので、この式が成り立つと考えても矛盾しないような気もする。


得られた結果だけを見たとき、疑問が湧く。

  • 平行軸線定理は密度が一様でない場合にも成り立つのだろうか?
  • mD2物理学的にどんな意味があるのだろう?



結果として得られた2つの項の内の1つ、重心回りの慣性モーメントIcは、密度が一様でない場合でも存在する。ところが、この結果が汎用的かどうか、力学の本ではこの点に関しても、全く触れられていない


この数学的な求め方から、mD2が物理学的にどんな意味があるのかが全く理解できない


その意味を示す具体的な例が、転がりの全運動エネルギーです。
Icは回転エネルギーに対応し、mD2は運動エネルギーに対応している。


ところが、転がりの全運動量に平行軸線定理を適用すると、
mD2は運動量がm・rVであることを示す。


従来、運動量はmVと定義されていたのに、なぜm・rVなのだろう?
それは、剛体の慣性質量がmではなく、なぜm・rなのかを証明することでもある。

Real Science of Golf

2012.11.08〜16

不均一な剛体棒の例





長さ2rの剛体棒のケースで求めてみよう


密度が一様でないため剛体棒の重心は偏っているが、
その重心から半径rだけ離れた位置を中心に回転している場合を考えればいい。
それが平行軸線定理の意味に対応している。


\[ {\Large \fbox{ $ \displaystyle{ \begin{align} 長さ2r&の\color{red}{均一でない剛体棒}の慣性モーメントを計算してみる。\\ 中心を&挟んで質量が\frac{2m}{5},\frac{3m}{5}。\\ 重心の&位置は中心から\frac{r}{10}だけ\frac{3m}{5}側に偏っている。\\ 重心位置&から半径rだけ離れた2つの位置A,Bを中心にしてそれぞれ回転させる。\\ I_s=&\frac{3m}{5r}\int\limits_\color{red}{\frac{r}{10}}^{r+\color{red}{\frac{r}{10}}}{x^2\hspace{1pt}{\rm d}x} +\frac{2m}{5r}\int\limits_{r+\color{red}{\color{red}{\frac{r}{10}}}}^{2r+\color{red}{\frac{r}{10}}}{x^2\hspace{1pt}{\rm d}x}: \frac{3m}{5}側の位置A\\ =&\frac{2m}{5r}\int\limits_{\color{red}{-\frac{r}{10}}}^{r\color{red}{-\frac{r}{10}}}{x^2\hspace{1pt}{\rm d}x} +\frac{3m}{5r}\int\limits_{r\color{red}{\color{red}{-\frac{r}{10}}}}^{2r\color{red}{-\frac{r}{10}}}{x^2\hspace{1pt}{\rm d}x}: \frac{2m}{5}側の位置B\\ =&\frac{397}{300}mr^2\\ I_c=&\frac{3m}{5r}\int\limits_{-r+\color{red}{\frac{r}{10}}}^{\color{red}{\frac{r}{10}}}{x^2\hspace{1pt}{\rm d}x} +\frac{2m}{5r}\int\limits_{\color{red}{\color{red}{\frac{r}{10}}}}^{r+\color{red}{\frac{r}{10}}}{x^2\hspace{1pt}{\rm d}x}\\ =&\frac{97}{300}mr^2\\ \therefore I_s =& mr^2 + I_c: 平行軸線定理が成り立つ。\\ m:&質量\\ r:&剛体の半径\\ 線密度:&\frac{2m}{5r},\frac{3m}{5r}\\ \end{align} } $ } } \]


このように、

  • 平行軸線定理は一様でない剛体の場合にも成り立つ

このような具体的な計算をしてみて初めて、そのことを理解できる。


教科書には、均一な(密度が一様な)剛体の慣性モーメントの計算例しか書いてないし、平行軸線定理の数学的な求め方密度が一様であるかどうかが明記されていないことがほとんどです。そのため、剛体の密度が一様でない場合にも平行軸線定理が成り立つことをほとんどの人は理解していない


それでは、mD2は物理学的に何を意味するだろう?
それを次に明らかにしよう