転がりの摩擦は1種類、「曲面抵抗」
The Fundamentals of Roll on Putting Green
&
The Friction of Roll is single, "Curved-Surface Resistance"

転がりの静止摩擦と転がり摩擦は同じ(2011年、日本)

2013.06.21〜2017.05.18

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転がりの科学 1 古典力学・数学の再生 PRINCIPIA II / ELEMENTS II
Amazon Kindleストアで発売中(定価 980円)
2017.05.15(月)第6版(ver6)発行(改版履歴)
(著者コメント)








要旨


転がりのときの摩擦は、実は、1種類しかない。

動き始めた時でも、
滑っているように見えている時(前のめり転がり)でも
普通に転がっている時(真の転がり)でも、
ボールは、まったく同じ大きさの抵抗(摩擦)を受けている

従来の言い方をすれば、それは静止摩擦(最大静止摩擦)です。

普通に転がっている間でも、静止摩擦が働いている。
転がっている間に働いているので、それを、「転がり摩擦」という言い方をしてもいいけれども、転がり摩擦の方が静止摩擦より小さい、というような間違った考え方をしてしまう恐れがある。
同様に、「静止摩擦」という言い方も、静止している時だけの摩擦のような誤解を受けやすい

言葉というのは難しい

このことは、今まで、ずっと、間違った解釈をされてきた
直方体の滑りと転がりとに根本的な違いはない、ということが理解されていなかった。
私自身、ずっと、誤解していた。

あえて新しい言い方をするとすれば、「球面抵抗」あるいは「曲面抵抗」という言い方がふさわしい。

そうすると、直方体の場合は、「平面抵抗」あるいは「エッジ抵抗」という言い方ができる。

「倒れることの連続が転がり」(参考資料[16])という原理には、2つの意味がある。

やっと、これで、転がりのメカニズムがすべて解明できた。
斜面と平面のすべてをやっと解明することができた。

撃力を加えた時のボールの転がり方(今までの考え方)


教科書の定番の「玉突きの問題」のように、

従来の考え方は、

ボールに撃力を加えた時に(パットした時)、最初滑りながらだんだん回転して行く。

静止状態から、撃力が加わると、最大静止摩擦を越えて動き出す。
次に、回転が始まり、滑っているように見えるので「すべり摩擦」が作用していると考える。
角速度が並進速度に追いついた途端に、転がり摩擦が作用する。

でも、本当にそんな都合のいい変化をするだろうか?
最大静止摩擦、すべり摩擦、転がり摩擦、この3つはどう違うのか?
その大きさは?

確かに、氷のようなツルツルの場合には、いわゆる「滑っている」という言い方ができる。

しかし、今までのこの考え方は、実は、完全に間違っている
転がりの原理を正確に説明していない

直方体の滑りと転がりの違い(その1)


最大の違いは、静止状態から力を加えて行った時に現れる。

直方体は急に動き出すと同時に、ガクッと軽くなる
つまり、最大静止摩擦よりもすべり摩擦(動摩擦)の方が少し小さい

それに対して、ボールの場合、スムースに転がり始める
直方体のように、ガクッと軽くなることはない

転がりでは、最大静止摩擦と転がり摩擦はまったく同じ


つまり、転がりでは、静止摩擦も最大静止摩擦も転がり摩擦もすべて同じ、
ということを表わしている。

このことは、非常に重要な意味を持つ。

グリーンの転がり摩擦係数を求める式、実は、同時に、静止摩擦係数を求める式でもあったと言うことです。

このことは、理解しているようで、誰も理解していない
教科書にも書いていない。

私自身、1983年から28年間、理解していなかったが、ちょっと考えてみれば、滑らずに転がっているのだから、静止摩擦だというのは納得できる。

しかし、一般的には、
静止摩擦と転がり摩擦は別物であるととらえられている
そこに、誤解が生じている。

直方体の滑りと転がりの違い(その2)


力を加えて動き出したあとで、
今度は、逆に、その力をだんだん弱めて行ってみよう。

直方体は、ある大きさの力になった途端に、急に停止するだろう。
停止する直前に、大きな最大静止摩擦に跳ね上がるということもない

ボールの場合は、動き出す時と同様に、スムースに停止する。
厳密には、直方体と同様に、ある大きさの力になった途端に、急に停止するだろう。

直方体の最大静止摩擦は引っかかっているに過ぎない


つまり、最大静止摩擦と言うのは、単に、接触面に引っかかっているだけに過ぎないと言うことです。その引っかかりを乗り越えるのに、少し大きな力が必要なだけです。

最大静止摩擦というものに、それ以上の特別な意味はない

あたかも、最大静止摩擦は、静止摩擦とすべり摩擦とを別物として分ける壁のように感じさせてきた。その功罪は大きい

このことは、基本的には、静止摩擦と滑り摩擦は同じ大きさだということを示唆している
特に、転がりの場合に、そのことは重要な意味を持つ。

2011.12.07〜2012.05.12

「倒れることの連続が転がり」とは
「真の転がり」、「前のめり転がり」の2つであり、
「転がりとは接地点回りの回転」という統一理論にまとめられる


転がりの原理を一言で言えば、
倒れることの連続が転がり」(参考資料[16])ですが、具体的には、

の2つの状態がある。

そして、「転がりとは接地点回りの回転」という統一理論として定義できる。


「前のめり転がり」(Fall-Forward Roll): 滑っているように見えて、実は、静止摩擦が作用している


一方、パットした直後から真の転がりになるまでの間はどうだろうか?
基本的には、最初は回転していない(あとで明らかになるが、パットでも回転を加えることは確かにできる)。
並進運動だけの状態から、徐々に回転して行く。

このときは、別の原理が働く。
それは、慣性の法則です。

「真の転がり」との違いは、言ってみれば、足をつまずいた時に、前のめりに倒れることと同じです。「前のめり転がり」と呼ぶことにしよう。
この時、慣性の法則が働くため、倒れている間に、倒れ始めた瞬間のエネルギーを失わない

つまり、パットしてから真の転がりになるまでの間はエネルギーを失わず、並進エネルギーの一部が回転エネルギーに転換する、ということです。エネルギーの形だけが変わる。

「真の転がり」は倒れようとしていて倒れない平衡状態で、
「前のめり転がり」は本当に倒れている、という違いがある。

「前のめり転がり」でも、静止摩擦(曲面抵抗)が働いている
その抵抗によって、つまづき続けている(倒れ続けている)状態です。

外から見れば滑っているように見えるけれども、
曲面抵抗の原理から言って、接地面の凸凹で受ける抵抗は、ボールが回転していても、回転していなくても、全く同じ抵抗を受けると考えられる。
滑っているから「すべり摩擦」だとか、転がっているから「転がり摩擦」だというような違いは全くない。

常に、曲面抵抗、従来の言い方で言えば、静止摩擦が働いているということで、すべてを矛盾なく説明できる

現実にパット直後から回転が始まっている


ツルツルの氷の上でボールが滑っていることを想像してみれば分かるように、いつまで経っても回転しない。

芝の上でパットした直後だけ仮に滑っていたとすると、滑らなくなるのはいつなのか、どうやって滑らなくなるのかという原理を説明できない
最初から回転しないようにボールの真横から打ったケースで、回転が生じるメカニズムを説明できない

Quintic Ball Roll Software」による映像分析でも、パット直後から回転が始まっている。このことは、滑っていない確たる証拠です。本当に滑っていればしばらくは回転しないはずだからです。

真の転がりになるまでに進む距離は、おおよそ、転がった距離の10%弱くらいと分析されている。

このような短い距離、短時間で、回転速度が並進速度に追いつくという事実は、すべり摩擦では説明できない

2012.05.05

「前のめり転がり」の厳密なメカニズムは「はずみ車モデル」


「前のめり転がり」での並進速度、角速度の時間変化を計測したデータを見ると、滑り摩擦モデル」が正しいように錯覚してしまう。

それを合理的に説明できるのが、「はずみ車モデル(フライホイールモデル)」です。

接地点回りで回転しようとすることがフライホイール効果となって、見えない形でエネルギーを蓄積する。

エネルギーを失ったように見えるので、「滑り摩擦」が作用すると思い込んでしまったそれが、「滑り摩擦モデル」が信じられてきた理由です。




並進の初速と加えた回転の合計が接地点回りの回転を生む


並進の初速は、前のめり状態(つまずき効果)によって、
見かけ上の回転速度として、接地点回りで回転が始まる。

それと同様に、加えた回転(正回転、バックスピン)も、接地点回りの回転として作用する

結局、並進の初速と加えた回転の合計(運動量全体)が接地点回りの回転を生む。


回転を与えれば、
中心回りで回転すると考えたくなるが、それは完璧な間違いです。

なぜなら、接地しているからです。

もし、空中に浮いていれば、加えた回転はボールの中心回りの回転になる。
接地していれば、話が全く違う。


「真の転がり」に相当する回転(正回転)を加えたとき


たとえ、「真の転がり」に相当する回転(正回転)を与えたとしても、
いきなり「真の転がり」になる訳ではない
これも、接地点回りの回転として始まるからです。

つまり、「真の転がり」に相当する回転(正回転)を与えたときにも、
「前のめり転がり」がある

これは、最初、なかなか理解できないかもしれない。
私自身、方程式を含めて、このことを完全に理解するのに、2ヶ月近くかかってしまった。
このことを理解しない限り、正しい方程式を求めることはできない。

理解してしまえば、なぜそう考えなかったのか、
逆に、不思議に思うようになるはずです。


「真の転がり」に相当するバックスピンを加えたとき


これも、もちろん、前進も後退もしない、と言うことにはならない

やはり、「前のめり転がり」が少なからずあるし、
その後で後退することはなく、前進する

このことが最も理解しづらいかもしれない。
これは、方程式化してみて初めて理解できる。

なぜそうなるかを一言で言うとすれば、
それは、やはり、接地点回りで回転が始まるということに尽きるし、
運動量が保存されるという基本原理から来ている。


前進も後退もしないバックスピンとは?


それは並進のエネルギーとエネルギー的に等価な回転を与えた時と考えたくなるが、それもまた間違いです。

「真の転がり」では、
並進のエネルギーと回転のエネルギーの比は5:2であることは既に分かっている。

基本的には、エネルギー差があるからこそ、前進する(転がる)と言える。

エネルギー的に等価なバックスピンを与えれば、運動量的にもつり合っているので、前進も後退もしない、と考えたくなる。

ところが、与えた並進速度は、前進して初めて、回転を生む
それがバックスピンとつり合うので、たとえ、エネルギー的、運動量的に等価なバックスピンを与えたとしても、少なからず前進する

そして、それよりもう少し強いバックスピンをかけたときに、初めて、
前進した後で後退して、元の位置で停止する。

さらに強いバックスピンをかければ、
前進しないで、いきなり後退するようになる。

ここは、よく考えてみないと、なかなか理解できない。

正しい方程式を導いてみて、やっと理解できる。

「真の転がり」(True Roll)


真の転がり、つまり、角速度と並進速度がつり合っている通常の転がりの間は、平衡状態にある。

倒れそうで倒れない(つまずかない)ため、もはや、慣性の法則は働かなくなる

曲面抵抗(静止摩擦)は本来の抵抗の働きをするので減速する

「前のめり転がり」の間も、外から見ていると、減速しているため、
全体としては常に減速している。

ただし、切り替わる時に、減速の仕方が変わるのが見た目に分かる。
「前のめり転がり」の減速の仕方と「真の転がり」の減速の仕方が全く異なるからです。

同じ減速と言っても、エネルギーを失うか失わないかという違いがあるからです。

エネルギーを失わないのに減速するという「前のめり転がり」は、
ちょっと考えると、不思議ですね。
それは運動量の形が変わるからだということはもう理解できたと思います。

転がりのミクロなメカニズム(曲面抵抗の意味)


ボールの場合には、デコボコがあっても簡単に乗り越えて行く性質がある。
ボールの表面は曲面だからです。
だから、直方体と違って、最大静止摩擦といわゆる「転がり摩擦」は同じ大きさのままです。

直方体のように引っ掛かりがないので、飛ぶように、あるいは、跳ねるようにして、乗り越えて行くだろう。微妙な上下運動をしていると言える。
曲面になっているために、横から見ると、楔状の隙間になっているので、接地面の凸部や芝がボールを持ち上げるような形になるからです。

「前のめり転がり」の間も、あくまでも、それは最大静止摩擦(曲面抵抗)によって倒れ続けながら、見た目には滑っているように見える。

ボールの場合には、同じ部分が接しているのではない

真の転がりになるまでの間に、滑っているように見えていても、回転が少しずつ増して行くので、ボールの表面の同じ部分が滑っているのではない。
常に新しい接地点が最大静止摩擦によって滑ることなく倒れようとしている

あるいは、跳ねるように、拡大すれば上下運動をしながら、芝と接触したり、離れたりしている。
ボールが芝に接地しているときにだけ、最大静止摩擦を受けていると言うことです。
滑っているように見えるのは、実際には、空転と接地を繰り返している

そして、全体を平均化すれば、常に最大静止摩擦が作用して倒れることの連続となっている。

なぜ、パターのロフト角が3、4deg(理想は1deg)なのか?


パターのロフト角の理想は映像分析から1deg(In search of the Perfect Putt)と言われている。

上で説明したように、接地面の出っ張りによってボールが持ち上げられて、微妙な上下運動をする。それは、ボールの底の曲面が芝につんのめるような抵抗を受けているからです。

もし上下運動せず、ボールと芝が密着していたとすれば、スムースな転がりにはならないだろう。

特に、打ち出した瞬間に急激な力がかかるので、ロフト角の効果によって芝から離すことがスムースな転がりにつながる。並進速度に回転速度が追いつくまでの短時間の間に小さいバウンドを付けることが大切と言うことです

「前のめり転がり」から「真の転がり」へのスムースな変化が意味すること


「真の転がり」になるまでの間に、角速度が並進速度に近づいて行って、追いついた瞬間に、転がり摩擦に変わると従来は考えられているので、仮に、最大静止摩擦と転がり摩擦が一致していなければ、逆に、不自然です。

この2つがまったく同じ大きさだからこそ、スムースに切り替われる
ボール自身から見れば、2種類の摩擦という自覚もないでしょう。

このように、結局は、パットした瞬間から、常に、同じ大きさの抵抗(曲面抵抗)を受け続けている。実に、シンプルなメカニズムです。

そして、「転がりとは接地点回りの回転」という唯一・共通の基本原理に基づいていることがスムースな変化の本当の理由です。

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