2013.06.21〜2018.09.20
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2018.09.19(水)第7版(ver7)発行( 改版履歴 )

あるヨーロッパのツアープロは確かに転がりの良いボールをパットしている



転がりの良いパットはたしかに存在する(2012年、日本)





転がりのよいボールは存在しない、と主張する人もいる


頭だけで考えると、普通はツルツルのパターヘッドでボールに回転を加えることなどできない、と安易に結論づけてしまいやすい
私自身、そう思っていた部分もあった。


しかし、計測データ(その2)を解析すれば、そういう考え方が間違っていることは、疑いようがない



三浦研氏の「システムゴルフ」も実は非科学





三浦研氏のシステムゴルフ理論のサイトに、
間違いだらけのゴルフレッスン記事」というページがあることをつい最近検索していて見つけた。


長い文章ですが、その後半に、「レッスンの内容が物理的に間違っていることが多い」というタイトルで、大槻義彦教授や河村龍馬教授を非科学的と非難している。


たしかに、私も、河村龍馬教授の著書「ゴルフの科学」を20年以上前に購入して読んだことがあって、内容的におかしい部分が多いという印象で、ほとんど役に立つ内容がなかった


東大の教授でもこの程度なのか、と安心したような、落胆した記憶があるので、三浦研氏が非難するのもよく理解できる。


三浦研氏の主張を要約すると、

「パターで与えることができるのは方向と初速の2つだけで、打たれてすぐに真の転がりになって、パターで打たれたボールは真の転がりしかない。転がりの良いボールは存在しない。

というものです。


これは、実にもっともらしいので、信じてしまう人もいるかもしれない


しかし、計測データ(その2)(あるヨーロッパツアーのプロのパット)はそれを完全に否定している。
転がりの10%弱、転がりの最初の部分は、真の転がりではないし、
計測された初速では到達し得ない距離まで転がっているからです。


これは、パターで回転を加えることが可能であることを明らかに証明している。


パターが与えることができるのは方向と初速の2つだけという三浦研氏の主張のほうが実は非科学的ということです。


三浦研氏は、「少しでも理科的な考え方ができれば分かる」という言い方をされているけれども、その物理学が転がりの科学を正しく扱ってこなかったのですから(私が正しい科学を提唱するまで)、学校で教わった理科的な考え方では、正しい結論に達することなどできない


三浦研氏本人が、そういう旧来の理科的な考え方をしているから、非科学的な結論を主張するのも無理からぬことです。







三浦研氏の主張で唯一正しいこと





三浦研氏の主張で1つだけ正しいのは
「撫で上げるように打てば前方への回転がすぐに始まる」という考え方が間違っているという点です。


「小さなボールに打たれた直後から前方へ回転が始まるほど上へのベクトルを与えるには、ボールの手前を掘り下げてからパットしなければなるまい。」と皮肉を込めて述べている。


ここで三浦氏が言おうとしているのは、
パットしたと同時に「真の転がり」にはならないし、そういう回転を加えることも不可能ということです。


パットしたと同時に「真の転がり」にできると考えるのは、
明らかに物理法則に反する


三浦研氏の主張で正しいのは、この点だけです。





転がりの良いボールは存在しない、と言う結論に飛びつくことが非科学





だからと言って、転がりの良いボールが存在しないという結論に飛びつくのはまさに非科学です。それは、論理の飛躍にすぎない。


打たれた直後から前方へ回転が始まるから、転がりが良いボールになる、というふうに結びつけて考える人がいることがそもそも間違っている


それと同様に、その間違った考え方を単純に否定して、
打たれた直後から前方へ回転が始まることはないので、転がりが良いボールも存在しない、というふうに考えることも間違っている


これは、三段論法の初歩的な誤用です。
間違った因果関係を否定しただけでは、正しい結論にはなり得ない。


風が吹けば、桶屋がもうかるからと言って、
風が吹かなければ、桶屋はもうからない、とは限らない。




最初の考え方(前提)が間違っていれば、
転がりの良いボールになる別の理由が存在するかどうかを考え直すべきです。





撃力が回転を一瞬で加える





「ボールの手前を掘り下げてからパットしなければ回転を与えられない」、
と考えること自体が非科学です。


撃力が一瞬で並進速度を与えるように、
撃力が一瞬で回転を与えることができる、と考えるほうが理にかなっている。


それこそが、撃力と言う概念を用いる本当の意味です。


パットのストロークは普通は長いけれども、長いから並進速度を与えている訳ではない。
極端なことを言えば、1cmのバックスウィングでも6m転がる強さで打てば6mだけ転がる。


それと同じように、
回転を加えていないように見えるくらいの短い距離と時間だけ回転を加える動作をすれば、回転を加えることができる。


つまり、並進速度を与えるのが撃力のすべてではなく、
撃力は回転を与えることもできる


そう考えるほうが科学的です。



転がりの良いボールとは





撃力が一瞬で回転を与えると言っても、
最初から「真の転がり」になるという訳ではない


回転を加えても、見た目は、徐々に回転が増して行って、
比較的すぐに真の転がりになる。
外から観察していると、回転を加えていない場合と見分けはほとんどつかない


転がり方は1つしかないと考えてしまう人がいるのは無理もない
見た目では区別がつかないからです。


その違いは、回転を加えることで、「前のめり転がり」の間のジャイロ効果が増すことです。


見かけ上の並進速度(初速)は遅くても、実際には、
回転を加えられているので、その分、方向性が安定する。


「前のめり転がり」の時間は、
回転を加えても加えなくても全く同じであることが、科学的にも明らかになった


それは、ジャイロ効果は加えた回転に比例することを意味する。
同じ時間だけジャイロ効果が作用するからです。
つまり、回転を加えれば加えるほど、方向性が安定することになる。


プロのパットは、確かに、転がりがいい。
それは、疑いようがない事実です。


転がり方は1つだけしかないと主張する人もいるけれども、それは全く事実に反する
もしそれが正しければ、プロもアマも初心者であっても全く同じパッティングができることになってしまう。


芝の生え方や、スパイクマークの影響などで、
方向が変わったり、回転を乱される。


特に方向性は、転がりの最初の影響がいちばん大きく出る
進めば進むほどズレが大きくなるからです。


そういう意味で、科学的にも、パットした直後に方向性を安定させることが重要です。
だからこそ、回転を加えることは確かに、転がりの安定性を増す。


安定した状態で真の転がりになれば、真の転がりもまた安定する。
不安定な状態で真の転がりになれば、真の転がりもまた不安定になる。


転がりの良いボールは確かに存在する。
それが、正しい科学です。



伸びのいいボールとは





伸びがいいボールという言い方もよく耳にする。


これは、回転を加えたボールは、見かけ上の初速に比べて、転がる距離が長くなるからです。


加えた回転は、「前のめり転がり」の長さにはそれほど影響はなく、「真の転がり」の長さを大きく伸ばす。そのことは、科学的に証明することができた


初速が遅く見えるのに、思った以上に距離が出るので、
伸びのいいボールという印象を強く受ける


転がりの悪い(回転を加えていない)パットしか打てない人は、なおさらそういう印象を受けるでしょう。そういう転がりを見慣れていないからです。




距離が伸びると言っても、どのくらい伸びているかさえこれまで誰も知らずに、感覚的にそう言っていただけなので、もしも極くわずかしか伸びなければまったく意味がない。


はっきり何割伸びるのかが分かるかどうかで、その意味が全く違ってくる。


だからこそ、プロのパットが「真の転がり」に相当する回転にかなり近い回転を加えていて、距離も2割以上伸びるということが科学的に証明できたことの意味は大きい。




転がりの良いボールも存在するし、
伸びの良いボールもやはり存在する


それが正しい科学です。


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