距離とグリーンスピードによって約5%〜60%(2011年、日本)











「前のめり転がり」の長さが全体の10%以下という説明には理論的な裏付けがない





In search of the Perfect Putt(2011年6月)」という記事で、真の転がりになるまでの長さが全体の10%以下という解析結果を何度も取り上げている。


The best way to fit a putter or prove the putter is properly fit is to analyze what the ball is doing. The tools in Quintic Ball Roll help you do that. という記事(2012年2月)には、グリーンスピードによって、約10%〜20%とも書いてある。


しかし、なぜそうなるのかという根本的な見解は全くない
理論的な裏付けがなく限定的な測定結果だけでそう述べている(推測している)に過ぎない。


「The physics of golf」(参考文献[20])には、Daish氏およびCochran氏・Stobbs氏(1968)が約20%だと述べた、と書かれてあるが、グリーンスピードなどの詳細は不明


以下のグラフを見れば分かるように、計測した条件によって、20%や10%以下と誤って結論づけてしまうのも無理はない。


科学的な検証としてのデータ量が不足している





幸運にも、明確な方程式を導けたので、これを科学的に検証できる
その方程式を使って計算すると、



確かに、このデータだけを見ると、解析結果はほぼ正しいと判断してしまいそうです


データ量が少なすぎるため、これだけで結論を出すのは科学的とは言えない


以下のグラフからはっきりとした科学的な結論を示すことができる。

「前のめり転がり」の比率の変化のグラフ


  • 転がる距離の変化(10cm〜80m)
  • グリーンスピードの違い(4ft〜15ft)



その時の「前のめり転がり」の比率がどのように変化するのかを等高線グラフで示したのが以下です。


転がる距離80mというのは、世界最大クラスのグリーンがそのくらいです。


プロがパットした時のように回転を与えると(γ値=0.137744)、比率が少し小さくなるが、全体的な傾向はほとんど同じということが明確になった。

Ratio of Fall-Foward Roll with No Rotation Added
Ratio of Fall-Foward Roll with No Rotation Added

2012.03.13

10%以下とか約20%という誤った結論を出してしまう理由





このグラフを見れば、
実験で10%以下とか約20%という結論を出してしまう理由がよく分かる。


実験をしようとすれば、誤差をできるだけ小さくしようとするので、
5m〜10mくらいの距離で実験するだろう。
実際のグリーンでは平らな部分が狭い範囲しかとれないということもある。


グラフが立っていることに注目しよう。
特に、5m以上になると立っている。


距離を同じ条件にすると、グリーンスピードが変わっても、比率がそれほど変わらない。
それを測定誤差だと安易に推定してしまう。
そのため、間違った結論を出してしまう
何メートルの距離で実験するかで、結論が変わってしまう。


結局、間違った理論の元で、いくら実験しても
データの本当の意味を知ることはできない。


それが、過去の実験の限界です。


転がる距離が5m〜10m以上のとき「前のめり転がり」の比率は10%以下





転がる距離が5m〜10m以上になると、確かに、10%以下になる。


しかも、グラフの傾きが立っているので、
グリーンスピードが変わっても、割合はほとんど変化しない。


転がる距離が同じなら、割合もほぼ同じということですが、
それはあくまでも、5m以上のときだけです。


計測データ(その1)計測データ(その2)はグリーンスピードも転がる距離もほとんど同じなので(条件がたまたまほとんど同じ)、結果的に、割合もあまり変わらなかったにすぎない。


データを取るなら、もっと変化させるべきですね。

転がる距離が1mのとき「前のめり転がり」は25%〜40%





例えば、転がる距離が1mのとき、「前のめり転がり」は25%〜40%、
つまり、25cm〜40cmになる。


Quintic Ball Roll Software」は映像から解析しているので、これだけ短いパットでは、どこからが「真の転がり」かを解析することは難しいというのは容易に想像できる。
測定精度はそれほど高くはないでしょう。


転がる距離が短くなるにつれて、「前のめり転がり」の割合が高くなって行く理由は、初速が遅くなるほど、真の転がりの長さが急激に短くなるためです。


「前のめり転がり」は初速に比例し、
「真の転がり」は初速の2乗に比例するので、これは当然です。


想像してみてください。
転がる距離が1mのとき、わずか10%の10cmで「真の転がり」になるでしょうか?
ちょっと短すぎると感じるはずです。
動いていなかったボールが真の転がりになるには、それなりの時間と距離が必要というのは、なんとなく分かるでしょう。
距離が短いから、最初から真の転がりになるわけではない。

グリーンスピードに反比例





グリーンスピードが遅いほど、比率が高くなる。
グリーンスピードが遅いほど、同じ距離だけ転がすためには、強く打たなければならないため、「前のめり転がり」が長くなるのは当然です。

10%〜20%というのは一般法則ではないが、一般論としては正しい





以上のように、比率はグリーンスピードと転がる距離に反比例する。


グラフを見て分かるように、明らかに、転がる距離の影響の方が強い


このように、10%〜20%というのは一般法則ではないということです。


ただし、5m〜10mのパット、それはよく経験する距離ですが、
そういうパットのときには、前のめり転がりの比率は、10%程度と見積もるのは正しい。


それが、科学的、理論的にも立証された

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