10mのパットで2mショートする(2012年、日本)











「科学的ゴルフ上達法」には明確な答えはなく、一面的な実験だった





「科学的ゴルフ上達法」(参考文献[1])では、
転がる距離は理論上は、初速の2乗に比例するが、
測定データでは、1.7乗とか1.8乗に比例している、と書かれてある。
その理由について明確な答え(方程式)は書かれていない


1982年にこの本を読んだ時、どうして2乗に比例しないのか、本当の理由は示されなかったが、最初に滑っているように見える部分の影響だろうという印象を受けた。


理論通りには行かないのが現実の世界だから、そういうものだよね、
という一種の誤解を植え付けられてしまった、と今ははっきりと言える。


「科学的ゴルフ上達法」では、
単純な構造の振り子式のパッティングマシンを使って、実験をしている。
できるだけ正確に計測しようとすると、そういう仕掛けを使うのはありがちです。


それは、回転を加えないパットという一面的で中途半端なデータだったことを意味する。


回転を加えないパットの距離は初速の1.7〜1.9乗に比例する




Exponent of ininial velocity with No Rotation Added



回転を加えない1mのパットを基準にして、その時の初速の2倍〜9倍で打ったときに、もし理想的な2乗に比例すれば、4m〜81mだけ転がるはずです。


実際は何乗に比例するのかを正確な方程式を用いて厳密に計算したものがこの等高線グラフです。


グリーンスピードによっても変化するし、
打つ強さによっても変化して、
全体的に言えば、転がる距離は初速の1.7乗〜1.9乗に比例する。


2乗との差は小さいように見えるけれども、これは、数学的、物理学的に言って、相当に大きい差です。これ以上2乗に近づくことは絶対にあり得ない


「前のめり転がり」の長さは全体の10%前後なので、これほどの影響が出るとは想像できないが、これが現実です。


回転を加えないパットは距離感が悪いことから逃れることはできない
そのことを科学的に証明できた。


「科学的ゴルフ上達法」のような実験は、どうしても限られた条件なので、あらゆる条件でどうなるかを知ることは事実上不可能です。


この点でも、正確な方程式が得られたことの意味は大きい。
すべての現実的な条件で計算が可能になったので、このグラフを見れば、すべてを理解できる。「科学的ゴルフ上達法」で示された疑問はすべて解決できた


以下のように具体的な例で計算してみるとさらに分かりやすい。



回転を加えないパットは14%〜26%もショートする





典型的なグリーンスピード7.5ftでまずは計算してみよう。


ちょうど1m(3.28ft)転がるとき、初速1.20574m/sです。
この1mのパットを基準にして距離を打ち分ける。


この初速の2倍で打った時に、
2乗に比例すれば、2^2=4倍、つまり、4m(13.12ft)転がるはずですが、
正確に計算すると、11.2129ft(3.42m)で1.77303乗です。


9倍の初速ならその2乗、81m転がるので、このくらいまでを見れば十分です。



このように、距離によって、指数が変化する。
指数は、2から大きく離れている


距離は理想の値から見て14%〜26%も短くなっている。
ロングパットになるほどショートしやすい最大の理由がここにある。


ロングパットでショートしないほうがおかしい。
10mのパットで2mくらいショートすることはよくある。
それは、自分の感覚が正しい証拠と言っていい。

オーガスタ並みの高速グリーンでも12%〜21%もショートする





グリーンスピード12ftのときも計算してみよう。
1mのパットの初速は0.987948m/sなので、



やはり、12%〜21%もショートする。
ショートする割合は、グリーンスピードが速いほど多少短くなるが、大雑把に見ればほとんど同じ傾向があると言っていいでしょう。

いくら練習しても距離感を良くすることは不可能





これでは、スリーパットしてしまうのも無理はない。
こんなに距離感の悪い打ち方をしていれば、どんなに練習をして距離感を良くしようとしても、練習したグリーンでは良くても、応用が利かない


常に、感覚とのギャップがある中でギャップを埋めようとするので、
安定したパットをすることはほとんど不可能に近い


距離感がなかなか上達しないのは、必然と言っていい。

「科学的ゴルフ上達法」の実験結果を証明





この現象は、「科学的ゴルフ上達法」(参考文献[1])でも実験結果のグラフになっていたが、その理由については明確な説明はなかった


それを理論的に今回(2012年)証明することができた


60mも転がれば、2乗にもっと近づくかと思いきや、
思ったほど2乗に近づかないことも明確になった。


逆説的に言えば、参考文献[1]の実験結果に極めて近い値を計算できるということは、<span style="color:red; font-size:12pt">前のめり転がり</span>」を含めて、「<span style="color:red; font-size:12pt">転がりの基本原理</span>」が正しいことが裏付けられた、と言えます。
30年以上前にSONYの社員(小田桐洋一氏)が測定した実験が、今になって役に立ったことを小田桐洋一氏も喜んでくれるでしょう。


実のところ、私は、この証明ができるとはまったく考えていなかった。


距離を求める方程式を導いた後になって、参考文献[1]に書いてあったことを思い出して、もしかして、1.7乗とか1.8乗という値が計算できるのではないかと思って、計算してみた。


これほど、実験値と一致するとは、私自身びっくりしているくらいです。


そして、それに留まらず、回転を加えた場合も計算してみて、
<span style="color:red; font-size:12pt">新たな事実を発見</span>することができたことは、さらに驚きだった。



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