全体の距離は一定ではなく、真のグリーンスピードより少し長い(2011年、日本)
段差の一番上から、自然に転がり始めた時に、斜面の長さも含めて転がる距離を正確に計算してみよう。
すると、おもしろい性質があることが分かる。
斜面も含めた距離を計算するwidget
式(2-30)を使って全体の距離を計算するためのWolframAlpha widgetを作成した。
現状はBETA版ということもあって、同じ変数を2回使えないので、角度を2箇所で入力しなければいけないのは、ご愛嬌です。
真のグリーンスピードよりも長い
勾配10%くらいになると、傾斜の強さがg=1となって止まらなくなる。
たとえば、グリーンスピード7.5ftのとき、g=1というのは10.464%勾配と等価なので、斜面の長さ8.29ftだけ転がって止まる(段差の高さ0.263mの場合)。
真のグリーンスピード8.17ftよりもわずかに長くなるのは必然です。
g=1のときは、厳密に言えば、自然には転がり出すことはないが、軽く触るくらいで、転がり出して、超低速(等速)で転がって行って、段差の下に達すると同時に停止する。
この点だけをとっても、グリーンスピードと同じ距離だけ下るという法則は存在しないことが分かる。7.5ftに比べて24cmも長い。
勾配が増すにつれて、全体の転がる距離はだんだん伸びて行く。
そして、最終的には、真のグリーンスピード + 段差の高さ ≈ 9.03ftに近づいて行く。
以下の図は、グリーンスピード7.5ftの例ですが、グリーンスピードが変わっても、傾向は同じです。
転がる距離は、勾配が大きくなるほど少しずつ距離が延びています。
普通の段差は47%〜70%(最大100%前後)と言われていますが、この狭い範囲であれば、
大雑把に見れば、ほぼ一定した距離だけ転がる、というのは1つの救いです。
ただし、グリーンスピードと同じ長さではなく、真のグリーンスピードより少し長い距離です。
その違いを正しく認識することが大切です。
細貝氏が「パット・エイミング教本」の中で、「グリーンスピードと一致する」、と書いてあるような一般法則はどこにも存在しない。かなり大雑把に言えば正しいと言えますが、それが、傾斜(段差)の一般法則であるかのように受け取られることは危険であり、科学的ではない。
正確な現象を知った上で、それを近似するのが正しいアプローチです。