ほとんど誤差はない
これほどの誤差は出るはずもない
計算結果を見て、どうせ近似計算の誤差だろうと、
最初は簡単に結論を出してしまいそうになる。
確かにオイラー法は最も誤差の大きい方法ですが、
こんなに大きな誤差は出ない。
それに、転がりは単純な物理現象なので、いくら誤差が蓄積すると言っても、こんなに大きくなるはずもない。
例えば、速度に比例する空気抵抗のケースの放物線をオイラー法で計算してみれば、誤差がほとんどないことが確認できる。
一般的に言えば、数値計算の手法ごとに、誤差がどの程度かが示されているが、我々素人から見るとどうも確証が持てない。
式自体が間違っているのか?
式(3-2)自体が間違っているでしょうか?
しかし、こんな単純な式のどこにも間違いがあるはずがない。
単純な形にしてある理由がここにある。
微分方程式を解いて、以下で示すようにWolframAlphaや関数電卓でも積分できる形に持って行くと、式の意味を理解できにくくなってしまうし、その変形自体に間違いがあるのではないかという疑いも出てしまうからです。
だからこそ、式を単純なままで数値計算することに意味がある。
微分方程式からWolframAlpha、そして簡単な実験
この値が正しいことをはっきりさせるためには、
微分方程式を解く以外にはない。
あるいは、もっと洗練された数値計算の手法(参考文献[5]のような)を使って積分計算をするか、最近の関数電卓では積分計算ができるものがあるのでそれを使って計算をしてみてもよい。
そして、現在は、WolframAlphaを使えば、普通のブラウザーから簡単に積分計算をすることができる。
手っ取り早いのは、簡単な実験をしてみることです。
ただし、理論的にこうなるかもしれないと思って実験する場合と、学校の物理の知識だけで実験した場合とでは、全く違った結論を出してしまうかもしれない。先入観というのは、実験結果に大きく影響するからです。
結論を言ってしまえば、オイラー法による計算結果は、微分方程式を解いて求めた正確な値と比べてほとんど誤差はない(下表を参照)。
傾斜の強さg | 停止位置 | 時間T | |
X座標 (横方向) | Y座標 (傾斜方向) | ||
0 | 1 | 0 | 1 |
0.3 | 1.0230 | 0.1649 (0.1648) |
1.0989 |
0.6 | 1.0989 |
0.4688 | 1.5626 (1.5625) |
0.9 | 1.2539 | 2.3687 (2.3684) |
5.2634 (5.2632) |
(表) オイラー法で数値計算した値と微分方程式を解いて求めた正確な値 (f=1, θ0= 0)
括弧内の値は、微分方程式を解いて求めた正確な値。
単独の値は、オイラー法で数値計算した値と同じ。
グリーンでこの違いに気づくのは難しい
g= 0.9のような大きな曲がりを経験することは稀なので、現実的にはせいぜい1割程度越えるだけです。この程度の違いに気づくのは難しい。だから誰も疑問に思わなかったのでしょう。