平面を基準にする





全ての値を1と考える

 
最終的な目的は斜面での転がりです。
そのためには、平面を基準にして相対的に考える必要がある。
 
そこで、式(1-2)と(1-3)で、摩擦力F= -1、初速V0=1で打ち出した場合に、
時間T=1の間に距離L=1だけ転がって止まると仮定する。
 
加速度の項で言ったように、質量を1にしたのも同じ理由です。
平面で距離L=1だけ転がるとして、斜面ではどうなるかを知りたいからです。
 
式(1-3)でT = 1とすると、
\[ {\Large \fbox{ $ \displaystyle{ \begin{align} \frac{-I}{r^{\hspace{3pt}2}}=1 \end{align} } $ } } \]
と見なすということです。
 
慣性モーメント I はボールの内部構造によって異なるし、ボールの半径rもラージとスモールがある。
しかし、相対的に考えるので、この絶対値を知る必要はない。
その時使っているのは1つのボールなので、定数であること以上の意味は無いからです。
別にゴルフボールでなくても同じです。


摩擦がない状態を基準に考えると一見奇妙な値になる

 
 
ところが、このようにすると、式(1-2)は、
\[ {\Large \fbox{ $ \displaystyle{ \begin{align} \color{blue}{ L=\frac{1}{2} }\\ \end{align} } $ } } \]
となってしまう。
 
L = 1としたいのになぜ1/2になってしまうのか?
疑問に思うかもしれない。
全てを1と考えること自体に矛盾があると疑うかもしれない。
 
しかし、これは、摩擦がないときに同じ時間(t= 1)の間に進む距離V0・t = 1のちょうど半分になる、という意味です。
このことは、言われてみると実に面白い。
摩擦が強くても弱くても、必ず半分の距離になる。
 
摩擦F=1のときに、時間T=1で、距離L=1だけ進んで止まる。
摩擦がない時は、同じ時間T=1の間に、距離L=2だけ進む。
摩擦がないのだから余計に進むのは当然ですね。それがちょうど2倍になるということです。
 
例えば、摩擦が3倍になると、時間T=1/3の間に距離L=1/3だけ進んで止まる。
それに対して、摩擦がない場合にも、時間が3分の1になれば、距離はL=2の3分の1になる。
 
摩擦が強くなれば、停止するのも早くなるから、距離L=1/2は一定となる
摩擦が無い場合を基準にするから、L=1/2という一見、奇妙な値になってしまうだけです。


摩擦があることを基準に考える

 
 
でも、実際の転がりを考える時には、摩擦が無い場合を基準にしても何の意味もない
摩擦がない場合を基準に相対的に(教科書的な絶対値のように)考えるのではなく、摩擦があるという基準で相対的に考えればいいので、L= 1とするために、式(1-2)を、
\[ {\Large \fbox{ $ \displaystyle{ \begin{align} L=\frac{-V_{0}^{\hspace{3pt}2}}{F}\\ \end{align} } $ } } \]
と表せばいいということです。
摩擦F= -1、初速V0=1のときに、時間T=1の間に、距離L=1だけ転がって停止する
そう考えればいいということです。
それが、平面を基準にして、相対的に考えるということの意味です。
 
摩擦が限りなくゼロに近づけば、距離Lは無限大になる。さっき説明したように厳密に言えば、無限大の2倍の距離ですが、それは結局無限大なので、全く矛盾しない。

|